才能は常に 孤独のうちに成る
才能のなんたるかを知らぬ者は常に 他者の同意を求め
それを知る者は常に 黙して語らない
人の才能を十全に理解できる者は 常に少ないが
自らの才能を信じ続けられる者は もっと少ない
+ +
フラッシュバックする記憶は 辛い過去ばかりで
憤りや蟠りの数よりも ため息のほうが多いけれど
苦しかった思い出は かけがえのない淡い詩情
砂城のようにはかなく 失われてゆく悲しみ
+ +
生きるために 壮麗な思想はいらない
殺すために 高邁な理想はいらない
騙すことに 複雑な理由はいらない
欺くことに 難解な理屈はいらない
美辞麗句 自己欺瞞
嘲笑する 自己批判?
老病苦死 自己矛盾
失望する 自己否定?
深淵に憧憬し 浅薄な継続を
深遠に陶酔し 醜悪な隷属を
酔うために飲む自分がいる
寝るために酔う自分がいる
+ <今日の短歌> +
原色の 葉の輝ける 万華鏡 闇夜に浮かぶ 幽玄の秋
水音が 響く曇ったガラス越し 外した指輪 消え行く吐息
忘却の淵に 飲まれて逝く身かな 無慈悲な神の それが慈悲なり
ピスタチオ 齧りて独り飲む酒は 琥珀に香る 芳醇な酔い
+ <今日の短歌> +
久方に 嬉しき便り 夜もすがら 琥珀の香り 舌で嗅ぎつつ
肉を超え 普遍の世界を観じれば 世界は空と 海ばかりなり
晩秋に 忍び込みつつある冬の 足音を聞く 宵闇の風
神と言い 仏と呼んだ なにものか 世界を廻す 瞬きの間に
+ 振り返る +
諦めの悪さがとりえなんだ デットライン際に強くてね
たとえ転んだって タダじゃ起きやしない
たとえ歩伏前進だって 進んでることには違いないだろ?
足踏みさえも好きじゃないんだ 目指すところが遠くてね
地平の果て遥か ダテに歳取っちゃいない
たとえ昼寝してたって 時間は過ぎ去っていくだろ?
高みを目指すのは それが美しいと思うから
慢心した人間のように醜悪になりたくないから
進むことを選ぶのは それが向いてると思うから
怠惰な人間のように恥知らずになりたくないから
そのまま前のめりに死ねたなら こんな幸福な人生もないさね
+ 審 判 +
偽りし者は進み出よ 欺きし者は手を挙げよ
良心に仮借なく 誠実なる者を踏みにじりし者よ
後悔の自責なく 善良なる者を責め苛む者よ
汝が謳いし暁の支配は終わりを告げた
汝が纏いし闇色の衣は引き剥がされた
ゼウスの雷が 貪りし者たちを打ち
ゲヘナの火が 欲深き者たちを焼くだろう
偽りし者は進み出よ 欺きし者は手を挙げよ
厚顔に恥もなく 沈黙を守り続ける者よ
白面に汗もなく 擬態を取り続ける者よ
汝の浅さに絶望せよ
汝の無知に絶望せよ
進み出ず 手を挙げざりしすべての者たちよ
汝らに訴追は認めない まずは裁かれよ