酒に酔い 雰囲気に酔い 女(ひと)に酔い 言葉に酔って 過ごす宵口
幸せと 言って笑った 横顔に 安堵しつつも 寂しさが湧く
零れ出る もう聞き飽きた 慣用句 身体で語る 覚悟さえない
春を待つ 蕾もつかぬ枯れ枝に 樹氷が咲かす ひとときの花
凍てついた 枯れ枝に咲く 氷花 儚く消える 宿命(さだめ)まで似て
溶け落ちて 消えることさえ 厭わない 花咲(え)むときの 潔さかな
+ <今日の短歌> +
わがままに 思いのたけを ぶつけては 人を困らす 幼い子供
目を見つめ 「オトナの時間はこれからさ」 かい抱く手と 絡ませる舌
時折りは 僕も思ってみたりする 低い天井 越えられぬ壁
〜曹操 孟徳〜
破格なる 覇王の衣冠 纏いたる 治世の能吏 乱世の姦雄
+ イミテーション +
このCDに刻まれている信号が 変換され曲となって流れ出る
機械から溢れ出すこの旋律は 本物の演奏とどこが違うのだろうか
空気を振るわす振動に どれだけの違いがあるのか
鼓膜に伝わる感覚に どれほどの違いがあるのか
それは 同じモノなのか
それとも 別のモノなのか
いま この天空に佇む月は 本物の月なのだろうか
数分前 月に反射した ただの光に過ぎないのだろうか
それは 同じモノなのか
それとも 別のモノなのか
僕が見ているあなたは 本物のあなたなのだろうか
僕の脳が創り出した 幻想に過ぎないのだろうか
それは 同じモノなのか
それとも 別のモノなのだろうか――
+ +
知らない振りをするのはいい
知ってる振りをするのはやめな
+ <今日の短歌> +
明日を待ち 明後日を待ち 夜もすがら グラス傾け 想うのは君
苦しみに のたうつ君を 癒しては 癒されている 僕の傷跡
苦しみに のたうつ君を 癒すのは 癒す自分が 気持ち良いから
抱きしめて その感触を確かめる 伝わる熱と鼓動と想い
+ パントマイム・5 +
草木も眠りに就く頃に 僕に会いました
彼はすこし酔った顔で いつものように笑っていました
「なんだか今夜はご機嫌じゃないか?」と 僕が言うと
「捨てる神があれば、拾う神もあるもんさ」と 彼は言いました
+ +
産み出したいなら もっともっと苦しめば良い
+ +
あなたが望むなら 僕はあなたを汚そう
あなたが望むなら 僕はあなたを貶そう
あなたが望むなら 僕はあなたを犯そう
あなたがそう望むなら 僕はいくらでも壊れよう
+ <今日の短歌> +
〜出逢い〜
すれ違い 巡り会わぬも宿命(さだめ)なら 出逢ってしまう 運命もある
偶然の 出逢いが人を創り出す すべてが糧(かて)で すべてが財産
朝日差す 電車に揺られ想うのは まだ見ぬ君の 初めての相貌(かお)
去る者は 追わぬと決めて 生きている 出逢いがあれば サヨナラもある
引き出しを 開けて戸惑う 悪戯に 歳を重ねて 来たものだなと
振り返り 人の歴史を紐解けば いつも出逢いに あるは必然
香水に 触発されて思い出す 出逢った頃の 君の面影
始まりは ゆるやかな坂の頂(いただき)で 終わりに向かい ゆるゆると落つ
つれづれに 紡ぎ綴りし言の葉が 手繰る縁(えにし)の 綾ぞおかしき
+ 四 季 +
日ごとに街が色付いてゆく頃に 出逢った君は
街が墨絵の世界に塗りこまれた頃に 雪のように消えた
また暖かくなって 街が花で埋まる頃に
あるいは煽情的な熱さに街が染まった頃にでも
僕の前にひょっこりと 姿を現してくれないかな
+ +
限りある意欲と時間とを
無駄に使ってはいけない
+ <今日の短歌> +
足跡を 辿り巡りて歩く旅 世界は広く 視界は狭く
膨大な 雪をもたらす 温暖化 これも自然の 仕返しかもね
アイシテル たった五文字の言の葉に 違う答えを 当て嵌めてみる
ひたむきに 走る姿に惹かれてる 汗と涙と 努力の跡と
+ +
人は 自分のモノサシでしか 他人や世界を測れないけれど
そのモノサシに絶対の信を置くのは 無知な思い上がりでしかない
+ <今日の短歌> +
正論は ただ正しいというだけで 正しいことが 善いことじゃない
蛇のよに 口を開けば毒を吐き 害虫害獣 あに異ならず
ただ独り 弱さを見つめ思うのは 我を殺さじ 人も殺さじ
飽きもせず また繰り返す日常が 重い想いを 忘れさせてる
何もせず ただその場所にあるだけで 人に仇する 我は毒物
優しさと強さの意味を 考えて 誰も救えず また夜が明ける
+ +
言いたいことを言うことと
言いたいことを飲み込むこととは
どちらがより罪深いかを考える
どちらも傷つけるだけだという結論は ひとまず横に置く
+ CARNIVAL +
裏切りと背徳のCARNIVAL
太陽の光が差さない場所で 悲しげに踊り狂う
裏切りと背徳のCARNIVAL
夕焼けと朝焼けの狭間で 我先に謳い遊ぶ
「明日がこなければ良い・・・」と 聞こえるように呟く
あなたの横顔は 深い闇を見つめているようで
鏡に映る顔を見つめ 煙草をくゆらすフリをして返事を保留する
「時間が止まってしまえば良い・・・」と 声に出して呟く
あなたの横顔は 遠い過去を見つめているようで
皺のシャツに袖を通し 耳に入らなかったフリをして言葉をはぐらかす
苦しいときにだけ便利に涙が出るその瞳は 悔しいけど魅力的で
悲しいときにだけ利口に雄弁になるその唇は 腹立つけど魅惑的で
一瞬の無言劇 また繰り返してみたくなる
裏切りと背徳のCARNIVAL
太陽の光が差さない場所で 命燃やし踊り狂う
裏切りと背徳のCARNIVAL
夕焼けと朝焼けの狭間で 我が春を謳い遊ぶ
+ +
どんな花が咲くかと期待してたんだけどね
花が開く前に 枯れちゃったみたいだね
もしかしたら 水をやり過ぎたのかもしれないね
+ <今日の短歌> +
地球から 見ればいつもと同じ朝 初日(はつひ)初日と ありがたがるなよ
今日もまた 追われるように過ごす時間(とき) 誰もオイラを 追ってないのに
アイシテル たった五文字の言の葉で 強くなれたと 勘違いする
酒が増え 煙草も増えて 銭は減る 生きてゆくって こんなことかね
+ 老朽化 +
いつまでも 同じ場所で 立ち竦んでいる
すこしも動かない なにも変わらない
悦びも哀しみも怒りも 虚しさに塗り込められ
朽ちてゆく ただ 流れに飲み込まれて
無力さを噛みしめることにも すでに慣れていて
孤独を味わうはずの舌は そろそろ麻痺してる
言い訳に相槌打つことにも すでに飽きていて
痛みを感じるだけの感性は そろそろ摩滅してる
どしゃ降りの雨に打たれ続けるような
生ぬるい優しささえ 今は愛おしい