口頭無形分化剤 その28


祭りばなし


 ♪ 村の鎮守の神様の〜 今日は楽しいお祭り日〜 ♪

 リクエスト企画の第3弾。
 今回はでんじさんのリクエスト「祭り」です。
 フェスティバルですね。
 カーニバルじゃありません。

 僕は世界の祭りを語れるほどの知識は、残念ながら持ち合わせ てはいないんですけどね。
 それでもフェスティバルとカーニバルの違いくらいは解ります。

 フェスティバルは、そのものズバリ「祭り」です。
 村の鎮守の神社で行われるのがこれですね。

 カーニバルは、カソリックの謝肉祭のことです。
 キリスト教では、春分後の最初の満月の後の日曜日を「イースタ ー」と呼び、キリストの復活を祝うお祭りをします。この祭りの前の 40日間を「4旬節」と言いまして、カソリックの人々は、この間、 肉食を断つ習慣があるそうなのですね。
 その4旬節の前に数日行われるのが、カーニバルです。
 敬虔なカソリック教国でも、カーニバル中は道化や滑稽な行いが 許され、様々な仮面劇が行われるそうです。
 普段できないバカ騒ぎをして、酒を飲み、肉を喰らい、それをして 肉食と告別し、4旬節を迎えるわけです。
 有名なのが、リオのカーニバルでしょうか。
 広義では「お祭り騒ぎ」のことも確かに指しますが、日本の祭りを 語るなら、ここではやはり分けて考えるべきでしょうね。


 さて、くだらない蘊蓄はさておき。

 古来から続く日本のお祭りは、例外なく神様を祀る儀式です。
 聖徳太子の「日出処天子」の記述を受けて、この国が日本という 国号を名乗り始めたのは大化改新前後と言われていますが、それよ りはるか以前から、「祭り」は行われていました。
 当時の日本人にあったのは、仏教のような体系的な普遍宗教では なく、もっと素朴なアニミズム寄りの民俗宗教だったわけですが、 彼らは集落に必ず鎮守の社を置き、そこに自分たちの神を祀りまし た。天然自然の驚異から一族血族を守るため、五穀の豊穣を願い、 無病息災を祈る場所として、社は機能していたのですね。
 その社で、秋の収穫を感謝して行われたのが、現在にも残ってい る多くの「祭り」のルーツになるわけです。
 だから普通、寺では祭りはしませんね。
 仏様は祀ったりしないのです。

 祭りで催されるさまざまな行事。
 だからあれは、本来神様へ奉納する儀式なのですね。
 神楽が舞われ、山鉾が、だんじりが、曳山が街を曳かれるのも、 神に捧げる祭礼であるわけです。
 ま、見物客の方は、そんなこといちいち意識してはいないのでし ょうがね。

 僕は残念ながら、日本の大きな祭りというのには、ただの一つも 参加したことがないのです。
 だから山鉾もだんじりも山笠もねぶたも曳山も、この目で見たこ とがありません。
 何を書けというのでしょう・・・(泣)


 どうしようもないので、僕の大学時代の話でも少し書きましょうか ね。

 大学の「祭り」。
 そう、「大学祭」です。

 僕は豊田市にある某私立大学に通っていたのですが、その大学、 本校の名古屋にあった学舎では行われる大学祭が、なぜか豊田の 学舎では行われていなかったのですね。
 ホント言うと、僕的にはどーでもよかったんですがね。
 僕の友人が、無いなら創ろうか、と動き出したわけです。
 大学祭自体はどーでも良い僕ですが、悪だくみとなれば話は別で す。
 裏方好きなのですね。
 僕は高校時代、何の役職も肩書きも持たず、生徒会を実行支配し ていたような男です。
 二つ返事で一枚噛むことにしました。

 とはいえ、何をどうすればいいのかまったくわからないわけです。
 何のコネも何の経験も何の知識も無い人間が、たった4人集まっ て、大学祭自体を創ってしまおうってんですから、無謀通り越して滑 稽ですらあります。

 それでも、バカな友人と奇特な有志が数人集まってくれましてね。
 一応「大学祭実行委員会豊田」という組織ができ、大学の学 生課と本校の大学祭実行委員会の方々の協力もあって、大学から運 営資金を引き出すところまで成功しました。
 今から考えると、かなりの無茶ですね。
 何の下準備もない状態から、2ヶ月くらいでここまでやったわけで すよ。
 頭を張った友人の行動力と牽引力には頭が下がります(マジ)

 で、その組織での僕の仕事はといえば・・・。
 もう、なんでもやりましたね!
 会計になって組織の金を握り、宣伝活動を牛耳り、パンフレットの 編集作業と印刷屋さんとの交渉をやり、イベント企画を考え、運行計 画を練り、大道具をつくり、小道具を集め、近所の小中学校からテン トを借り集め、前日になればテントを張り、ゴミ箱を設置し、看板を 立て、ビラを配り・・・・・・・(以下略)。

 何をやるにしても、根本的に人員が不足していましたからね。
 やれることは、自分たちで全部やらなきゃどうしようもないわけです。
 めったやたらに忙しい日々でしたがね。
 今考えると、充実してましたねぇ。

 当日が近づいてくるとね。
 まわりが、こう、殺気だってくるわけですよ。
 のんびりしたヤツでも、イライラしてきましてね。
 空気がピリピリしてくる。

 僕は、そういうのが楽しくてしょうがないんですね。
 性分でしょうね(苦笑)


 前日の夜、考えられることをすべてやり終えて、頭をやった友人 と暗い部屋で二人きりになった瞬間がありましてね。
 そこでそいつが、こんなことを言いました。

「お前だけは、いっつも冷静やったな」

「誰がおらんくても、今回の学祭はできんかったと思うけど、お前が おらんかったら、ぜったいここまでこれんかったと思うわ」

 嬉しかったんですがね。
 僕は違うこと考えてましてね。

「祭りにはな、御輿が必要なんや」

 僕の言葉です。

「俺の代わりはいくらでもおる。俺の仕事は軍師やからな。頭が良 えヤツなら、誰でもできる。けどな、お前の代わりは俺ではできん。 お前は俺らが担ぐ御輿やからな」

 僕は、人の上に立つタイプではないんですね。
 逆立ちしても、僕には彼ほどの求心力はない。
 彼のまわりに集まった連中というのは、結局彼が好きなのですね。

 僕は自分の分は、わきまえてるつもりですがね。
 それでも、彼をずいぶん、妬ましく思ったこともありましたね。


 僕は御輿にはなれない男なのでね。

H.13 10/8



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