コ ト の ハ




+ <今日の短歌> +


ジンライム 独り飲む宵 水無月の 月なき夜に 雨音もなし


杯交わし 夢を語りていた友は 紫煙のごとく 明けに消えたり


なにごとかを 為したいと願い 今日もまた 無為に陽が暮れ 齢を重ねる





+  DEEP BLUE  +


携帯電話が鳴るたびに あなたを思い出してしまう

無邪気に笑い はにかむその声を


季節を忘れて僕らは愛し合ったけれど それでもやっぱり時間だけは過ぎていて

人の誠実さなんてものも 時と共に変わっていくのかもしれない


タネを明かさないことが 手品師の優しさであったとしたら

僕はあなたを騙し続けるだけの 優しささえ失ってしまったということだろう


深い深い水の底まで あなたを連れてゆくことも考えたけれど

息が続かない無様な姿を見せることには どうも耐えられそうにない


世界には寂しさに震える人が溢れ 刹那の快楽に誰もが群がっている

売っているのは安物の愛ばかりだけれど それでも本物よりは楽らしい


あなたの声を乗せたデジタル信号が 本物の声であったかどうかはもう解らないけれど

それでも僕の過ごした時間が現実であったことを 僕だけは知っている





+      +


必要なのは ほんの少しの「勇気」と

「諦め」だけでしょう?





+  高杉晋作  +


あざなえる縄のようだと誰かが言ったこの人生は

禍福を織り交ぜ繰り返されるだけの日常

楽しい時間と辛い時間を差し引きすれば

せいぜい5円玉ほどの価値もない

富める者も貧しき者も 愛された者も憎まれた者も

賢人も愚者も 英雄も凡人も

しょせんは時間と共に骨になってしまうのだ

そこにどれほどの違いがあるというのだろうか

5円の価値と想い定めて すでに死んだと心に決めて

人並みの暮らしを怖れ 安穏な日常を避け

ただ ひたすらに狂うことを目指したおかげで

本来さして面白いこともない人生を

こうも面白く過ごすことができた

Jun. 27 2002



+  寓 話  +


裸足で歩いたその道は 剣のような岩肌で

ズタズタになった足裏に 容赦なく汗が滑り込む

顔を歪めた少年は まだあどけない横顔で

ズタボロになった服を着て 休みなく歩き続けてる

握りしめられた右手には 蛍のように儚げな

輝きを放つ鈍(にび)色の 泥にまみれた石がある

流した血で洗い清めた 宝石のようなその石は

朝の光にさらされて 薄いメッキが剥がれて落ちる

薄汚いその石ころが 賢者の石だと言う者を

あなたは嘘つきと笑うだろうか・・・





+      +


足りないのは覚悟ですか?

それとも イキオイですか?





+      +


破衣破笠 一草鞋

到る処の青山 骨を埋めんと欲す

石枕 夢は冷やかに孤渓の月

古寺 魂暗く 五更を懐かしむ

生を見る死の如く 死は即ち生

自ら言う 我はこれ方外の客

無情淡心 咏歌を玩ぶ

曾(かつ)て高位を抛って 肯(あえ)て惜まず

                −高杉晋作−

Jun. 26 2002



+  松陰先生がね  +


「大器は晩(おそ)く成る」って言ってたよ





+  Distortion of Reality  +


崩してしまえば良い

割れたガラスの破片 砂でつくった城


壊してしまえば良い

鬱血した澱み ヘドロのように溜まった闇


暴風雨が来れば良い

すべてを薙ぎ倒し 流し尽くせば良い


火砕流が来れば良い

すべてを焼き尽くし 埋めてしまえば良い


なにもかも 終わってしまえば良い

あとにはただ 晴れわたった空

Jun. 24 2002



+ 馬上少年過ぐ +


馬上 少年過ぐ

世平らかにして 白髪多し

残躯 天の許すところ

楽しまざるを これ如何にせん


四十年前 少壮の時

功名いささか また自ら私(ひそ)かに期す

老来識(し)らず 干戈(かんか)の事

ただ取る 春風桃李の卮(さかずき)


                     −伊達政宗−

Jun. 15 2002



+      +


その涙は 誰のために流しているのですか?

僕のためですか?

それとも 自分のためですか?





+ 虚構の詩(うた) +


僕が創った詩の中で

あなたは僕を愛してくれるフリをしてる

僕が創った詩の中で

あなたはシアワセでいるフリをしてる

嘘で固めた世界だけど

それでも現実には違いないから

手品のタネが割れるまでは

僕はあなたを 見守ってます

Jun. 2 2002



+ 禊ぎ +


「穢れ」を祓ひたまへ 「穢れ」を清めたまへ


それは儀式

纏った「人」を脱ぎ捨てた欲望


「穢れ」を祓ひたまへ 「穢れ」を清めたまへ


彼岸と常世の境界の その線の上で乱れ狂う踊り子

旋律は鼓動よりも早く 調べも高らかに忘我を遊ぶ

「禊ぎ」の時間は背徳 貪婪な獣にも似た咆吼

そこに祝福はなく そこにしか幸福はない


「穢れ」を祓ひたまへ 「穢れ」を清めたまへ


道化の哀しみを知らぬ者だけが あなたを道化と呼ぶだろう





+ <今日の短歌> +


しとしとと 蔀を叩くこの梅雨を 古人は何故か 水無月といふ


蹴鞠なら 勝った負けたもなかりしを 賭けるは国の 恥と威信か


人の世に 無用のものと知りつつも 功名餓鬼の根は捨てられず


知らぬ間に 君を照らした月隠れ 闇夜に慣れば 君が隠れる


それこそが 無明長夜の灯火と 信じて行かむ いま来たる道





+ 贖罪 +


廃屋の陰で身体を休める 薄汚れた野良猫が

ひもじさで泣く子供を 不思議そうに見つめている

銀の瞳に映るのは 争いの記憶と諍いの記録

それが愛憎の証なら 人はなんと罪深き生き物か

慈しみも安らぎも 悲しみもせつなさも

お前は同じように持ち合わせているのに

知っているその過ちを また蒸し返し そして繰り返す

虚しさにつく吐息 独りなら強がる必要さえない

それはまるで 雲に隠されるために昇ってきたような月





+      +


だから 無知は罪なのさ

Jun. 1 2002


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