コ ト の ハ




+ イミテーション +


このCDに刻まれている信号が 変換され曲を奏でる

機械から流れ出るこの旋律は 本物の演奏とどこが違うのだろうか

空気を振るわす振動に どれだけの違いがあるのか

鼓膜に伝わる感覚に どれほどの違いがあるのか

それは 別のモノなのか

それとも 同じモノなのか


今 天空に佇む月は 本物の月なのだろうか

数分前 月に反射した光に過ぎないのだろうか

それは 同じモノなのか

それとも 別のモノなのか


僕が見ているあなたは 本物なのだろうか

僕の脳が創り出した 幻影に過ぎないのだろうか

それは 同じモノなのか

それとも 別のモノなのだろうか

May. 26 2002



+ さくらふぶき +


はかない想いを抱かせてしまうことが 罪であるというのなら
いったい誰が私を糾弾してくれるというのでしょうか?


去り逝く宿命(さだめ)と知りながら

あなたの心に踏み込んだ

私に与える罰ならば

死神(かみ)よ私に微笑むな


せつない想いを抱かせてしまうことが 罪であるというのなら
いったい誰が私を罰してくれるというのでしょうか?


消え逝く宿命(さだめ)と知りながら

見えぬ未来に蓋をした

私に与える罰ならば

女神(かみ)よ私を救けるな


散り逝くさくらの花びらを  ふぶきのごとくする風の

声を聞かむとしやうとも  すでに匂ひとなりぬるを

かなしき人を想いゐて  独り静けく見る月の

杯を重ねつ待ち侍り  はや明け暗れに白々と

蔀を濡らす朝露の  目を凝らし見ゆ朦朧に

浮き上がりたる人影は  花に惑ひし白日夢


この苦しみが永遠に

続くことこそ地獄なら

今日も明日も明後日も

時間(とき)よ私を動かすな


どうしてあなたはそんなにも 私に哀しみを押しつけるのですか?

May. 22 2002



+      +


朝の来ない夜はないけど

それでも やっぱり太陽は沈んじゃうんだよね





+      +


神も仏も 我に仕えよ

我が為に善をなし 我が為に悪をなせ





+      +


あなたが 僕の言葉の本当の意味を知るのは

もっと ずっと先のことさ

May. 12 2002



+      +


「重さ」を理解することが 「優しさ」だってのかい?

せめて「同情」と言ってくれよ





+ 生命の歩調 +


遙けき遠くに 鎮座まします 高き霊峰 目指し往く旅人は

同じ円の上を 永遠に 廻り続ける人形 目も眩む蜃気楼


勇気ある者を名乗るなら その歩みを止めねばならぬ

飛ぶことに臆病な鴉の翼からは 夜色の毒が滴っている


炎のように肌を焼く 灼熱の陽を浴びて それを苦難と思ってはならぬ

針のように身体を貫く 凍てつく雨を浴びて 歩み続けることを誇ってはならぬ


それは「愚者」

ただ「足ること」を知らぬ者


屈託無い笑顔で破滅の引き金を引く者よ 汝のその善良な微笑みを恥じよ

わけ知り顔で腕を組みただ佇む者よ 汝のその存在を消す努力をせよ


辿り着いたその先で手にするは虚構

ひとときの悦楽に せめて流された涙を見よ


高みに立つ頂で手に入れた虚像

決して満たされぬ欲望に せめてかりそめの死を与えよ


May. 7 2002


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