「完璧な歪み」


 「美しい」モノは「可愛く」はない。

 「美しさ」とは「神」である。
 それはどこにも実在せず、けれど確実に存在する。
 それは決して人の手に入るモノではなく、けれど誰もがそれに 信仰にも似た憧れを持つ。

 「美しく」あろうとする試みは、つまり神に−−「絶対」 に、あるいは「完璧」に−−近付こうとする行為である。

 我々は欠けている。
 すべてにおいて、確実に、そして致命的に、多くのモノが欠落し てしまっている。
 我々は神ではなく、つまり「完璧」ではない。
 それに対して、神は「絶対」である。
 けれど、神はその「絶対」であるがゆえに、「完璧」であるが ゆえに、「絶対でない」ということ、「完璧でない」ということを 失ってしまったのである。

 神が失ってしまった属性。
 それは、我々が手にすることを許されたモノでもある。
 「完璧であること」に欠けたモノ。
 「絶対であること」ができないモノ。
 「可愛さ」は、そういう属性の1つの発露である。

2002.4.11


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