口頭無形分化剤 その2
迷わず言えたら それでいいけれど 〜杉山清貴 『あの夜の向こうに』 詩:安藤芳彦〜
当時、私は他の小学生に漏れず、ガンダムの大変なファンで、親 父に頼み込んで、無理やり映画館に連れていってもらったように思い ます。 あの頃はただモビルスーツがカッコ良くて、プラモデルなんかも買 って、夢中になってたものですが、あの映画の主題歌は(『めぐり 逢い宇宙』ってタイトルでしたっけ?)、妙に心に残っています。
今 哀しみにふるえてる 愛しい人よ
恋しくて 募る想い
愛しい女よ もう一度
こんな嬉しいことはない…
子供心にジ〜ンときました。 その意味すら、良く理解できずに…。 『一人で生きる』って、何でしょう? 一体何のことを云うんでしょう? そして『環れる処』って?
人は、たぶん一人では生きてゆけません。ちょっと考えただけで
も、自分一人しか世界にいなければ、電気もガスも水道も供給され
ませんし、食料も、衣類も住居も、誰も造ってはくれません。話し相
手がいなければ、精神的にもまいるでしょうし、仕事も義務もなけ
れば、生活からはハリが失われてしまうでしょう。ガンダムのあの歌
詞は、そういうことを云ってるんだと思っていました。
現在、私はこう思っています。
『人』ならば、『「生きていること」が素晴らしい』と考える人
たちがいて、『存在そのものに価値があるのだ』と考える宗教があ
って、なるほどそういう人たちから見れば、確かに私は歪んでいる
でしょう。
山に籠って、自然に抱かれて暮らせば、おそらく限りなく『一人
で』、生きることはできるでしょう。しかし、誰からも必要とされず、
また誰も必要としない人がいたならば、その人は『生きている』と
いえるでしょうか?
誰からも必要とされず、また誰も必要としない人とは、『その人』
以外の誰かにとって、『いてもいなくてもいい人』ということになり
ますよね?
何もかも失ったと思ったアムロは、母の胸に抱かれるように、ラ
ラァの元へと飛翔します。母胎回帰ともいえるその至福のなかで、
しかし、彼は最期にこう云います。
こんな嬉しいことはない…
だからこそ、『人』はたぶん、『人』で『生きて』いられるのだか ら。 貴方には、『環れる処』がありますか? そして−−−
H.7.1.30 |